公開日:2026年9月25日|執筆:西川 薫(株式会社SCHEME 代表取締役)

開業前のブランド品仕入れは開業費?個人事業の支出を分ける

支払日だけで分類しない
  • 売るための品

    商品・在庫の記録へ

  • 開業の準備

    開業費の要件を確認

  • 自分の買い物

    事業支出と分ける

説明図:個人事業の開業前支出を整理する入口です。個別の税務判定を代行する図ではありません。

中古ブランド品を販売するために開業前から商品を仕入れていても、その代金をすべて「開業費」にまとめることはできません。販売用商品は在庫の記録へ、開業準備の費用は要件の確認へ、私的な買い物は事業と別の記録へ分けることから始めます。

この記事は、個人で事業を始める人が支出資料を整理するための解説です。法人の創立費、消費税の仕入税額控除、個別の仕訳入力は対象にしていません。税額を小さくする順番ではなく、何に支出したかを説明できる分類を扱います。

1. 開業費は開業前の支出すべてではない

個人の開業費は、事業を開始するまでに、開業準備のために特別に支出する費用です。所得税法施行令第7条は、繰延資産となる費用の範囲から、資産の取得に要した金額とすべき費用や前払費用を除いています。e-Gov:所得税法施行令第7条

繰延資産とは、支出の効果が後の期間にも及ぶため、税務上の償却を通じて必要経費にする費用の区分です。開業費もこの区分で扱います。「開業日より前に払った」という日付だけでは、開業費に当たるか決まりません。

分類の入口
  1. 私的な支出か、事業のための支出かを分ける
  2. 商品や設備など、資産を取得する支出かを確認する
  3. 残る費用について、開業準備との具体的な関係を確認する

説明図:商品や設備、前払費用を開業費に混ぜないための確認順序です。

国税庁の手引きには、開業準備のための広告宣伝費などが開業費の例として挙げられています。ただし、同じ「広告代」「勉強代」という名前でも、実際の目的や内容によって判断が必要です。領収書の科目名だけで処理を決めないようにします。国税庁:決算の手引き・繰延資産の償却費

2. 支出の中身で分類する3ケース

次の3つは説明用の架空例です。金額の大小ではなく、買ったものの用途と開業準備との関係で読み分けてください。

ケースA:開業後に販売するバッグを買った

転売用に仕入れ、販売まで保有するバッグは商品です。棚卸資産とは、販売目的で保有する商品などの資産で、ここでは在庫を指します。販売用商品は、開業前の支出であっても開業費へまとめず、仕入れた商品として管理します。資産取得費を除く第7条と、商品を棚卸資産に含める国税庁の説明に基づく整理です。国税庁:棚卸資産の範囲

商品側へ残す情報

商品を識別する管理番号、品名・状態、購入日、仕入先、金額、取引明細の保存先、開業時点で残っているかを記録します。金額だけの「準備費用合計」に埋めないことが要点です。

ケースB:開業告知の広告を出した

開業のために特別に行った広告宣伝の費用は、開業費を検討する例です。申込内容、掲載期間、告知内容、支払資料を一緒に見て、何を始めるための支出だったかを説明できるようにします。商品代と同じフォルダーに入っていても、目的が違うので区分を分けます。

役務はサービスの提供を指します。前払費用は、継続的なサービスのために支払った費用のうち、原則としてその年の12月31日時点でまだ提供されていない部分に対応する費用です。契約期間によっては、この区分の検討が必要です。単に「広告」と書かれているから全額を開業費へ入れるのではなく、契約の中身を確認してください。前払費用の範囲も施行令第7条第2項で定義されています。

ケースC:自分で使うために買った財布

事業とは別の私的な購入を、ブランド品だからという理由で開業費に混ぜません。国税庁は、家事上の経費は必要経費にならないと説明しています。業務との関連を明確に区分できる部分がある場合の扱いも案内されていますが、私用品を事業へ移す際の評価や記帳は個別確認が必要です。国税庁:事業所得の必要経費

私用品を後から販売用に回した場合は、当初の購入目的、使用状況、事業へ回した時点をメモし、開業費への一括計上で処理を済ませないようにします。

3. 仕入れた商品は在庫と売上原価につなげる

売上原価は、販売した商品に対応する仕入れ原価です。国税庁の決算手引きでは、その年の仕入高をそのまま必要経費にするのではなく、期首と期末の棚卸高を使って計算すると説明しています。国税庁:棚卸表の作成・売上原価

通常の売上原価の計算

期首の棚卸高 + 年間の仕入高 − 期末の棚卸高

期首は年の初め、期末は年の終わりを指します。棚卸高は、在庫を所定の方法で金額にしたものです。現金の支払総額とは別に確認します。

開業時には、販売用の商品を一点ずつ確認し、仕入れ資料と対応させて一覧にします。すでに手元にあるバッグでも、商品番号と購入資料が結び付かないと、販売後の原価や残っている在庫を説明しにくくなります。

分類のやり直し例(架空)

「開業準備」として保管した封筒に、販売用バッグの取引明細と、開業告知の広告請求書が混在していたとします。合計をそのまま開業費にせず、バッグは商品一覧と明細をひも付け、広告は掲載内容と契約を確認する資料へ分けます。同じ支払いを商品側と開業費側の両方へ計上しないよう、元の資料に区分と確認結果を残します。

開業前商品を開始時の帳簿へどう入力するかは、使用する帳簿や会計ソフト、支払方法なども整理して税務署や税理士へ確認します。この記事の分類図を、そのまま仕訳の勘定科目に置き換えるものではありません。

仕入れから販売までの支援内容を動画で確認できます仕入れから販売までの流れを案内する動画

4. 任意償却は分類が済んだ後の話

償却は、資産や繰延資産の金額を必要経費へ算入していく処理です。開業費には60か月で計算する方法のほか、任意償却の扱いがあります。国税庁の質疑応答は、支出した年に全額を償却することや、その年には償却しないことも可能で、60か月を過ぎた未償却額も任意償却できると説明しています。国税庁:償却期間経過後における開業費の任意償却

ただし、これは開業費として適切に分類された金額についての話です。商品代や私的支出を開業費へ移せるという意味ではなく、同じ支出を何度も経費にできる制度でもありません。

先に確認する3項目
  • そもそも開業費に当たる支出か
  • これまでに必要経費へ算入した金額はいくらか
  • まだ償却していない残額はいくらか

未償却額とは、まだ償却していない残りの金額です。過去の記録を見ずに領収書の額を再び全額入力しないようにします。具体的な償却額や申告処理は、自分の帳簿と過去の申告内容に合わせて確認してください。

5. 判断が分かれる支出は資料をそろえて相談する

内容が混在した請求書、私物を事業へ回した商品、契約期間がまたがるサービスなどは、名前だけで分類しにくい支出です。次のように、分かっている事実と判断してほしい点を分けると相談しやすくなります。

整理する事実用意する資料・説明
支払と対象日付、相手、金額、買ったものや受けたサービス
目的販売用か、開業準備か、私的利用を含むか
時期事業開始との関係、契約期間、使用や販売の状況
既存の記録すでにどこへ記帳したか、過去に経費化したか
質問分類、開始時の記帳、償却のどこを確認したいか

たとえば「開業前なので経費にできますか」だけでなく、「販売用バッグの明細を準備費用へ混ぜていた。商品は開業時点で残っている。開始時の記帳区分を確認したい」と伝えます。判断がつくまで資料を保留区分に置き、商品側・開業費側への二重登録を避けてください。

税務の分類と並行して、仕入れた商品が在庫・出品・販売のどこにあるかを追える記録も必要です。リユセルは中古ブランド品の仕入れから販売までをAIと専任スタッフで支援する有料サービスです。日々の商品管理に課題があれば、現在の作業と支援内容を照らし合わせてご検討ください。

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西川 薫(株式会社SCHEME 代表取締役)

西川 薫(株式会社SCHEME 代表取締役)
株式会社SCHEME 代表取締役。ブランドオークションでの仕入れとフリマアプリでの販売を自ら実践し、実際の取引にもとづいて本コラムを執筆・監修。大阪府公安委員会 古物商許可 第62111R061035号。

※2026年9月20日に確認した法令・国税庁資料に基づく一般的な整理です。個別の税務判断は税務署または税理士へご確認ください。説明例は架空で、取引実績や節税効果を示すものではありません。