公開日:2026年9月22日|執筆:西川 薫(株式会社SCHEME 代表取締役)

古物商の非対面取引|本人確認の選び方

非対面の本人確認を設計する順序
  • 対象を分ける

    取引と相手方

  • 方式を選ぶ

    必要物と実施条件

  • 完了を残す

    証拠と取引の対応

説明図:本人確認の運用を決めるための整理です。法令所定の方式は本文の公式資料で確認します。

宅配やインターネットで古物を買い受けるときは、身分証の画像を受け取るだけで終えず、取引が非対面かを判定し、法令で認められた確認措置を一つ選び、完了証拠を取引記録へ結ぶことが要点です。

先に結論

「本人確認書類を受領した」と「相手方の申立てが真正であることを確認した」は同じではありません。採用した方式の要件を一式で満たす運用を決めます。物品を先に受領することが組み込まれた方式もあるため、受付・受領・確認・支払の順序を公式の説明と照合してください。書類受領や荷物到着だけで確認完了とはしません。

1. まず非対面取引に当たるかを分ける

取引の範囲を確認する
  • 自社の立場

    買受け・委託等の取引類型

  • 相手と接触

    対面機会と確認方法

  • 義務の範囲

    金額・品目等の条件

説明図:最初に取引類型を整理します。以下の図も運用設計の整理であり、採用方式の法定要件は公式資料で個別に確認します。

この記事でいう非対面取引は、インターネット、電話、郵送などを使い、相手方と直接会わずに古物を買い受ける取引です。警視庁の非対面取引の案内と大阪府警は、相手方が申し立てた住所・氏名などが真正で、なりすましでないことを確認する措置が必要と案内しています。

判定欄確認する質問次の行動
取引の向き自社が相手から古物を買い受ける取引か売却のみの話と区別し、確認義務のある買受け等かを確認
接触方法本人と面前で確認する機会があるかなければ非対面の確認措置を検討
相手方個人か法人か、担当者は誰か法人でも担当者について必要事項を確認
過去確認適法な初回確認と識別符号の運用があるか以前の確認記録と、今回同じ相手と確認する仕組みを点検

過去の取引があるだけでは、確認を省略する根拠にはなりません。警視庁の方式10は、所定の初回確認を済ませた相手に発行したID・パスワードを、次回にサイト上で入力してもらう運用を示しています。メールや申込書にID・パスワードを書かせるだけの方法は認められません。この記事の取引IDは商品と記録を結ぶ補助番号で、この本人認証用IDとは別です。

以下は、古物営業法上の相手方確認が必要な買受け等を前提にした運用設計です。金額・品目等による確認義務の例外をこの記事で一律判定するものではありません。適用範囲は法第15条と警察の最新案内で確認します。取引IDは、自社で各取引に付ける照合用の番号で、法定の確認措置の代わりにはなりません。

2. 本人確認方法は一式で選ぶ

一つの方式を、要件の組合せで選ぶ

必要情報 + 自社の措置 + 完了証拠

一部だけを別方式から借りても、確認完了にはなりません。

説明図:必要情報・実施事項・完了証拠のどれか一つだけで済ませないことを確認します。

公式案内には、電子署名、本人限定受取郵便物、転送しない取扱いの郵便と本人名義口座への入金、容貌と写真付き身分証明書の画像送信など複数の措置があります。名称だけで選ばず、自社が各要件と証拠保存を最後まで実施できる方式を選びます。

郵便を使う2例で、必要な組合せを比べる

警視庁の案内にある次の2方式は、必要物と自社の作業が違います。全方式の一覧ではなく、選択時に比べる軸を示す例です。方式番号は同ページの見出し番号で、法令の号番号とは異なります。

公式案内の例選ぶ前に確かめること
方式5:本人限定受取郵便物等住所・氏名・職業・年齢の申出を受け、本人限定受取郵便物等を送付し、到達を確認する体制を用意できるか。単なる宅配便の発送とは異なる。
方式9:本人確認書類のコピー等を使う例必要な申出、書類の受領と保存に加え、記載住所への転送しない取扱いの簡易書留等、その到達確認、本人名義口座への代金入金契約を組み合わせて実施できるか。

コピーの取得だけで終える予定なら、方式9は満たせません。公式案内の方式5・9と各注記で、郵便の取扱い、到達確認、書類の鮮明さ、記録保存まで確認してください。到達確認は、例えば送付した受付番号を相手から連絡してもらうなど、公式に示された手順に沿って行います。

画像の扱いは方式によって異なります。方式9のコピー等には、記載内容を読める鮮明な写真画像も含まれますが、それだけで完了するものではありません。一方、古物商が提供したソフトウェアを使う方式12・14等では、あらかじめ撮影された画像や加工可能な画像を受けることは認められません。方式14でマイナンバーカードを使う場合は、表面と厚みの画像を受け、個人番号のある裏面は受けないよう案内されています。

  1. 警視庁または営業所所在地の警察が示す現行一覧を開く
  2. 一つの方式について、相手方から受ける情報を列挙する
  3. 自社から送る郵便・ソフトウェア等の条件を列挙する
  4. 到達、入金、画像保存などの完了条件を決める
  5. 個人情報の取扱いと閲覧できる担当者を社内手順にする
  6. 運用開始前に主たる営業所を管轄する警察署へ確認する
方式選択票

方式名[ ]/根拠ページ・確認日[ ]/相手方の申立事項[ ]/受領物[ ]/自社の実施事項[ ]/転送制限等の条件[ ]/完了証拠[ ]/保存場所・権限[ ]/警察署への確認日・回答部署[ ]

3. 受領から完了までを順番に記録する

取引N-001(説明用の番号)

本人確認の証拠 ← 取引ID → 対象商品の記録

別々の保存場所でも、同じ取引に戻れる対応を残します。

説明図:商品と本人確認記録を同じ取引へ戻れるように結びます。

段階実施すること残す証拠
受付住所、氏名、職業、年齢など必要事項の申立てを受ける受付日時、担当者、取引ID
確認開始採用方式と必要物を相手へ案内方式名、案内文、送信日時
措置実施選んだ方式の要件を省略せず実行受領・送付・到達等の証拠
完了判定方式ごとの完了条件を担当者が照合確認者、日時、判定根拠
取引記録本人確認と対象古物を取引IDで結ぶ商品情報、相手方情報、関連記録

本人確認資料と商品記録を別々に保存し、対応を示す番号も残さないと、どの確認がどの古物に対応するか追いにくくなります。取引IDで結び、閲覧できる担当者を必要範囲に限定します。

方式5の記録例:郵便を送っただけで完了にしない

架空の取引N-001で、住所・氏名・職業・年齢の申出を受け、本人限定受取郵便物で受付番号を送ったとします。発送時点では「確認中」です。相手から受付番号の連絡を受け、送った番号と照合した日時・担当者・連絡記録を残して、採用方式の完了条件を確認します。番号が違う場合は完了にせず、相違と次の確認事項を記録します。

これは上記の公式案内にある到達確認方法を記録へ落とした説明例で、実際の取引実績ではありません。郵便の追跡画面だけを見て、別途選んだ到達確認手順を省く例にはしていません。

取引ごとの完了記録
  • 取引ID・対象商品[ ]
  • 方式名・根拠ページの確認日[ ]
  • 必要事項の申出・措置の実施日時[ ]
  • 完了証拠の保存先・照合結果[ ]
  • 確認者・完了日時/保留理由[ ]
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4. 不一致があれば買受けを進めない

不一致を発見したら
  1. 確認完了にせず保留
  2. 不足の内容と採用方式の要件を照合
  3. 必要な措置を満たした証拠を残して再判定

説明図:不一致の内容と対応結果を残し、担当者の推測で完了にしません。

不一致停止する理由再開条件
申立住所と書類が違う真正性を確認できない相違の原因を確認し、採用方式で必要な措置を満たす
郵便が到達しない方式の完了条件を満たさない住所と返送理由を確認し適法な方式を再選択
名義が一致しない相手方との結び付きが不明管轄警察署へ相談し必要な確認を実施
画像が不鮮明・欠落必要事項や同一性を確認できない方式所定のデータを再取得

急いで仕入れたい場面でも、確認できない状態を担当者の推測で埋めません。法第15条第3項は、不正品の疑いを認めたときの直ちの警察官への申告を定めています。警察庁の解釈運用基準では、不正品は犯罪に当たる行為によって得られた物を指し、盗品などの財産犯の被害品より広い概念とされています。本人確認のやり直しだけで処理を終えないでください。

5. 運用開始前チェックリスト

引継ぎ時の確認

次の担当者が、採用方式の手順と証拠の保存先を特定できるか。

実施した人の記憶だけに依存していれば、運用を見直します。

説明図:担当交代時に手順と証拠の所在が伝わるかを確認します。

本人確認の方式が決まった後は、対象商品の仕入れ・在庫・販売の記録も整理します。日々の管理に課題があれば、現在の作業と困っている場面を整理して、リユセルの支援内容をご確認ください。中古ブランド品の仕入れから販売までをAIと専任スタッフで支援する有料サービスです。法定の本人確認や適法性の判断を代行するという案内ではありません。

仕入れから販売までの支援内容を確認できます。

支援内容を見る

仕入れ後の商品管理を
整理したい方へ

現在の課題を伺い、支援内容をご案内します。

相談は無料です。無理な勧誘は行いません。

西川 薫(株式会社SCHEME 代表取締役)

西川 薫(株式会社SCHEME 代表取締役)
株式会社SCHEME 代表取締役。ブランドオークションでの仕入れとフリマアプリでの販売を自ら実践し、実際の取引にもとづいて本コラムを執筆・監修。大阪府公安委員会 古物商許可 第62111R061035号。

※本記事は2026年9月20日時点の公的情報を整理した一般的な解説で、個別の法的助言ではありません。制度・確認方法は変更される場合があります。実際の運用は主たる営業所を管轄する警察署へ確認してください。中古品の相場は時期・状態・市場により変動し、利益や販売を保証するものではありません。